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★シチュエーションプレイ

※【何発でも】腹責め専門SS・その10【叩き込め】スレにも投下したものです。

 俺はいつものようにエレベーターに乗り、いつもの階を目指した。
 二十二階。ここは一般人が立ち寄るような場所ではない。スーツを着たサラリーマン風の男の受付がいるだけだが、俺みたいな客はこのフロアの奥に何人もいるはずだ。
「いらっしゃいませ」
「予約をしていた佐藤だが」
「お待ちしておりました。三回目の来店でございますね。内容に変更はございますか?」
「ない」
「かしこまりました。それでは十一番のお部屋へどうぞ」
 そしていつものように鍵を受け取り、目的の部屋へと向かう。
 どんな素材かは知らないが、フロア全体が防音壁で覆われていて、他の階どころかそれぞれの部屋から音が漏れることは絶対にない。何が行われているかは様々だろうが、共通している部分が一つだけある。
 十一番の部屋。俺は一旦足を止めて、今日の台本を頭の中で反芻した。多少間違えても相手がフォローしてくれるが、俺は常に完璧を求める。最初から最後まで決められた通りに進まないと納得できないタチなのだ。さすがに緊張する。深呼吸してから木製の扉を開けた。
 おお、これはすごい。扉の先は体育館になっていた。一応言っておくがここは学校などではなく、とあるビルの一室だ。しかし俺の目の前に広がっている光景は間違いなく体育館で、バスケが出来るくらい広い。一体どんな魔法を使ってるんだこの店は。
 そしてその中央に立っている女の子が一人。
「来たわね佐藤太一! 逃げなかったのは褒めてあげるわ!」
 セーラー服に身を包んだ女子高生が俺の名を呼んだ。部屋に入った瞬間からもう全ては始まっている。
「暇だったから来てやっただけだ。本気でやるのか?」
「当然。お兄ちゃんの仇を取るんだもん」
 目の前にいる十六歳の女の子――源氏名は茜。この店におけるAランクの一人。本名は知らない。彼女に兄がいるかどうかも知らない。なにもかも俺が勝手につくった設定なのだ。
 年齢も本当は不詳だがセーラー服を見事に着こなしている。目は丸くて童顔だし、女子高生といわれても全く違和感がない。髪は邪魔にならないようにポニーテールに結っていた。背は若干低めだがプリーツスカートから伸びる脚は健康的で妙にエロい。
 茜の兄をボコボコにしたから、その仕返しをしにきたという簡単な話。兄妹そろって空手をやっていて、妹の方は尊敬していた兄が負けたというのが信じられず――
「お兄ちゃんが負けるなんてあり得ない。卑怯な手を使ったんでしょ!」
「してない。真正面から返り討ちにしたんだ」
「嘘だ! いいもん。あたしがメッタメタにしてやる」
 彼女は拳と掌をぱしんと合わせてから構えを取った。その姿は確かに経験者のようで、実際空手を習っているのだそうだ。彼女に限らずこの店で働いている女の子はみんなそんな感じのスポーツをやっていて、体が出来上がっている。それが特徴であり、コンセプトの一つだ。
「俺は女を殴る趣味はない。見逃してくれないか」
「ふざけないで! 絶対、お兄ちゃんに謝らせてやる!」
 まっすぐ茜が突っ込んできた。真正面から。右の拳を振り上げている。
 俺はそれを避けなかった。頬に彼女の小さく固い拳が直撃したとと同時に視界がすごい勢いでズレた。うっわいてえ。台本通りとはいえマジで痛い。
 茜の心底驚いたような表情も、演技だから大したものだ。
「なんで……ガードくらいできたでしょ!」
「仕返しできたろ。これで勘弁してくれ」
 喋ると余計痛い。くそっ、さすがにここは手加減してくれと頼んでおくべきだったか。いや、やっぱりこれでいい。演技とはいえ全て本気でかからなくては。
「お兄ちゃんに謝るならね」
「それはできない相談だな」
「じゃあそうしてくれるまでボコる」
「抵抗しない人間を殴り続けるのか? それこそ卑怯な手ってやつだろ」
「むっ……それなら、あんたに正式な勝負を申し込むわ。これでいい?」
「受けないと言ったら?」
「ボコる」
「同じじゃねーか!」
「と、とにかく真剣に戦えー! 一度でいいんだから! でないとどこまでも付きまとうからね!」
「……はぁ」
 子供のように足踏みをする茜に対し、俺はため息を吐く。いかん、今のはあまりにもわざとらしすぎた。演技ってのはやっぱり苦手だ。
「一回だけな」
「分かればいいのよ――その前にあたしを一発殴って」
「なんで」
「こっちが先に殴っちゃったから! これじゃ気持ちよく仕切りなおしできないの!」
 なんてわがままなんだ、と俺は自分がキャラ付けしたくせにちょっと呆れてしまった。実際こんな女の子いるわけないな。
「分かった分かった。でも顔はさすがに抵抗がある」
「なによ、変なところで気を遣って……それじゃお腹」
「そこも女の子には大事なところだと思うが」
「鍛えてるもん。ちょっとやそっとじゃビクともしませんよーだ」
 べーっと舌を見せ付けている。おお、これはアドリブだな。なるほどそれなりにこっちもイラッときたぞ。
 拳をぐっと握り締める。茜は両手を後ろに組んで直立し微動だにしない。丸い瞳は背がいくらか高い俺の顔をじっと睨みつけていた。
「ふっ――!」
 俺は短く息を吐きながら腕を振るった。目の前にあるセーラー服に包まれた無防備に佇む女子高生の胴体。その中心に右の拳をめり込ませる。
「ふぐっ!?」
 どふっと鈍い音がした。めり込んだのは一瞬だけで、茜の持ち前の腹筋が拳を押し返してきた。さすがAランク。その感触に俺は感嘆する。素直にすごいと思った。
 茜の余裕ぶっていた顔が苦悶の色に変わり、腹を押さえながら身をわずかに傾ける。
「大丈夫か? 合図するべきだったな」
「けほっ……な、なに言ってんの? 鍛えてるってば。こんくらい平気だし別に。まあ、結構いいパンチ、持ってると思うけど」
 途切れ途切れな言葉ながらも強がってみせている。
「今のはまだ本気じゃないが」
「えっ……だ、だよね。今のが全力だったら笑っちゃう」
 乾いた笑みを浮かべる茜の額にはうっすらと汗が滲んでいた。全部演技のはずだが、あまりにもリアルに感じられる。そこがたまらなくそそる。
「あたしは、最初から本気だからね」
 腹を押さえていた両手を握り締めて構えを取る。プリーツスカートから覗く両脚がわずかに震えている気がした。
「いいぜ。来い」
 ちょいちょい、と指で挑発してみせる。
「調子にのんな!」
 怒りと共に彼女の脚が振り上げられる。格闘家らしく細すぎず引き締まった長い脚だ。しかも顔を狙ったハイキックである。
 俺はそれを上体を後ろに反らすだけで避けた。内心冷や汗ものだ。今のはマジで怖かった。顔には焦りを出さずに呟く。
「お、白か」
「――あっ!」
 反射的に茜はスカートを押さえた。顔を真っ赤にしている。すごいな、もはや演技とは思えない。女優になれるよきっと。
「絶対殺す!」
 おい待て、今のセリフは台本にないはずだぞ。マジで怒ってるんじゃないの。
 怒り心頭といった様子で打ち出されてきたパンチは、しかし台本どおりだった。真っ直ぐ迫る小さな右拳を俺は屈んでかわし、懐に飛び込む。
 一歩強く踏み込みながら、がら空きになっている茜の腹へと力を込めた拳をねじ込んだ。
「ぅげっ、がぁ……!?」
 みしりと腹筋がヘコむ。女の子とは思えないほど汚い呻き声が茜の口から溢れた。
 狙ったのは胃袋の辺り。彼女も自信を持っていたはずの腹筋はあえなく崩壊していた。セーラー服が少しねじれながら拳へと吸い込まれている。腹肉がぴくぴく痙攣しているのは拳を押し出そうとしているのだろう。
 今度はそうはいかない。茜の背中へと左腕を回して、細身だがほどよく筋肉がついた体を引き寄せながらさらに拳を押し込んだ。
「うぐぇ……!」
 既に深く突き刺さっていたパンチが強引に潜り込んだせいで搾り出されたような声だった。固く握った拳に鍛えられた腹筋が歪む感触と、その奥にある胃袋の温かみを確かに感じ取った。
「お前の兄貴を負かした拳だ。効くだろ?」
「ぇほっ、き、効いてない、し。こんなの、屁でもないよ。ぁっ……」
 そう口ごたえしている割には相当苦しそうだ。彼女の腹部には拳が沈んだままで、呼吸さえまともにできないだろう。それでも茜はまだ負けてないと意地を張って、俺の腕を引き抜こうとしながら睨み上げてくる。
 やっぱりこれだ。これがいい。相手の方が上手なのに強がって抵抗する女の子ってのはかわいいな。その顔をもっと歪めたくなる。
「そうか。今のも本気じゃないからな。やっぱり効いてないか」
「う……? そ、そうよ。七割くらい、でしょ」
「半分以下だけどな。しかも利き腕じゃないんだぜ」
「ううう……!」
 見る見るうちに茜の顔が恐怖に染まっていく。ここまで来ると俺はもう台本とか演技とかいうことを忘れそうになっていた。あまりにもかわいすぎるし、リアルすぎる。
「そんなに不満なら、次が本気の一撃にしてやるよ」
「あ、いやっ、待って――!」
 俺は右腕を素早く引き抜いた。反応するように一瞬びくりと体を震わせた茜は棒立ちとなる。わずかにヘコんでいるセーラー服の中心を、利き腕の拳で突き上げた。
 一際くぐもった鈍い音が響いた。
「ごぇっ……!」
 茜の口から潰れたような呻き声と舌が飛び出た。両目をめいっぱい見開いている。
 本気のボディアッパーは腹に深くめり込み、体が浮き上がるほどだった。衝撃が背中まで突き抜けたと思う。拳にはひしゃげた内臓の感触がはっきりと伝わってきた。
「かはっ……げぇっ……んむっ」
 えずいていた茜は咄嗟に口元を両手で押さえた。俺は慌てて拳を引く。体内で移動させられていた内臓が元に戻っていき、ぐぼっと水っぽい音をたてた。
「んぐぅ! っ、ごぷぅ!」
 抑えていた指の隙間から液体が溢れた。少し黄色く濁った胃液。胃袋に強烈な打撃を受けたんだから吐くのも当然だ。
「うぐっ……げほっげほっ! ぅえ、ぇほっ……!」
 ぽたぽたと体育館の床に胃液をこぼしながら茜は膝をつき、片手で腹を押さえながら海老のように背中を丸めた。こっちまで吐き気を催しそうなほど咳き込んでいる。
「どうだ、これも効いてないか?」
 わざと煽ってみるが、彼女はもう反論する余裕もないようだった。苦しげに呻きながらうずくまったまま。
「これで分かったろ。俺は卑怯な手なんか使ってない」
 小刻みに体を震わせている少女に向かって俺は告げる。
「卑怯者はお前の兄貴だよ。あいつがイジメをやってるとことを見たからな」
 ぴたりと震えが止まった。まだ腹部の痛みで悶絶している茜は小さく声を絞り出す。
「……うそ」
「嘘じゃない。むしろ妹のお前が正々堂々としていて俺がびっくりしたさ。よかったな兄貴に似なくて」
「うそ、だぁ……うそ……!」
「信じる信じないはお前の自由だ。もう俺に仕返しとかしないでくれよ。これっきりにしてくれ」
 いまだに立ち上がれない茜に背中を向けて扉へと歩を進める。あの木製の扉。開けるとその先は学校の校舎や中庭などではなく、ビルの廊下である。全く不思議な店だ。
 はあ、終わった。
 俺が受付へと戻ると、待ち伏せていたかのようにスーツの男が椅子から立ち上がった。
「お疲れさまでした。お知らせがございます」
「なんだ」
「次回からSランクの指名が可能となりました」
「マジで?」
 こんなに早くランクアップするとは思っていなかった。
 Sランク。つまりAランクよりも腹筋が固い女の子たち。茜も結構なものだったが、それを打ち砕いた俺は認められたということなのだろう。
 ここそういう店だ。用意されているのは部屋とランク分けされた女の子だけ。後は客が何もかも準備する。茜が着ていたセーラー服も俺が提供したものだ。
 客はどんなシチュエーションで「プレイ」するか、台本を書く。それを指定された女の子がテレビドラマのように演じてみせるのだ。プレイっていってもセックスは駄目。顔を傷つけても駄目。やっていいのは腹を殴ることだけである。もちろん本気で。
 今回のは兄を仇をとろうとした空手少女が、あっさりと返り討ちにあうという簡単なシナリオ。
一、俺が一発殴られる。
二、仕切りなおしとして女の子が殴られることを希望する。
三、大雑把な攻撃を避けられて腹に重い一撃。
四、とどめ。
 みたいな、こんな感じでオファーをする。備考として「最後のとどめを食らうまで効いていないと言い張る」みたいなオプションをつけたりする。茜は多分、一発目や二発目でかなりダメージを受けただろうが、俺のシチュエーションを忠実に再現してくれたというわけだ。あの子結構気に入ったかも。
「それにしてもお客様は珍しいタイプですね。一方的に痛めつけるのが定番なのですが」
「そんなの面白くもなんともない。どうせCランクばかり指名する客だろ?」
「ええ、その通りでございます」
 リストを見た限りCランクもかなりかわいい女の子ばっかりだった。だけどスポーツとかをなんとなくかじっている程度の体つきで、腹筋もたいしたことない。実際指名したことがあるから分かる。そのときはあまりにも腹が柔らかすぎたためか、一撃で気絶させてしまった。
 ただの人間サンドバッグじゃ興ざめだ。女の子を殴るにもそれなりの理由があるし、なにより大事なのはさっきも言ったシチュエーションである。俺は強気で男に引けを取らないタイプの女の子を打ち負かすのが好きなんだ。抵抗できない弱っちい子をいたぶるだけのプレイなんて反吐が出るね。
「お客様の評判は女の子たちの間でも噂になっています。私を指名してくれ、という声も上がっていますよ」
「そりゃあ嬉しいな」
 それってつまり私のお腹をぶち抜いて欲しいってことなのか。そう考えるとたまらなく興奮する。
「ところでSランクってのはどんな感じなんだ」
「そうですね……今のお客様だと、完全には楽しめないかもしれません」
 妙な言い方だ。俺の腕力じゃSランクの腹筋は砕ききれないってか?
「言ってくれるじゃないか。次までに鍛えておくよ」
「次回も電話でのご予約で?」
「もちろん。シチュを考えるにも時間がいるからな」
「かしこまりました。お待ちしております」
 女の子のリストを受け取り、会釈する受付に軽く手を振りながら俺はエレベーターに乗り込んだ。
 早速準備に取りかかろう。今回は女子高生をやったし、次はどうするかな。ちょっと趣向を変えて、コスプレみたいな衣装を用意するのも悪くない。メイドとか、魔法少女とかどうだ?
 なんにせよ、Sランクの女の子には期待が膨らむ。きっといい体つきで、並の男のパンチなんかものともしないくらいの腹筋なんだろうな。自分の肉体に自身も持っていることだろう。
 すんごい楽しみだ。
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★悪魔っ娘サーたん

 異種格闘技というのは、異世界にも存在する。その場合は戦うスタイルのことではなく、異なる『種族』のバトルを意味している。格闘とはいっても様々な世界から参加するわけで、常軌を逸した能力を持った強者で溢れていた。頂点に立った暁には、途方もない富が得られるだとか、全世界を支配できるだとか、とにかくとんでもないものが手に入るそうだ。
 血みどろの戦いが行われるはずの会場を、バトルの熱さとは全く別の声援が支配していた。
「やっほーみんな元気ぃー? 悪魔っ娘サーたんだよー!」
 声量はあるがあまりに威厳がない、クセのある幼い声。体も小さい彼女も参加者の一人である。
 ぴょんと長く伸びたアホ毛が特徴である紫色の髪はショートヘアで、大きく丸い瞳も同じ色。卵型の小さい顔は鼻も口も全てが美しく整っていた。
 赤いフリルがついた黒いキャミソールからは腕が完全に露出していて、丈も長くなくお腹の肌がちらちらと覗いている。さらに、脚を少し広げるだけで中が見えてしまいそうなほど短いスカート。紫のオーバーニーハイソックスからちょっぴり見え隠れする太ももが妖艶さを際立たせていた。
 サーたんが悪魔たる証は背中の羽とお尻から生えた尻尾である。羽毛がないコウモリのような翼と、先端がハートのような形をした細長い尻尾は彼女のトレードマークであった。
「集まってくれてありがとう! あたしの活躍見ていってねー!」
 会場全体が震えるほどの大歓声が沸き上がった。ほとんどが彼女目当てのギャラリーで、悪魔界だけでなく他の世界からも注目を集めているサーたんは満足そうに頷いた。
「くぅ~、たまんない! やっぱり参加して正解ね」
 もはや悪魔界全土だけでは物足りなくなったサーたんは、別世界のファンも多く獲得しようと意気込んでいた。あのにっくき天使界の住人だってきっとすぐに目をハートマークにするだろう。彼女はそれだけの自信を持っていた。
 コロシアムのような会場が唐突にブーイングへと変わる。サーたんと向かい合うようにして対戦相手が現れたのである。ギャラリーはサーたん目当てのファンであり、彼女の敵はすなわち彼らの敵であった。
「あーあ、あたしの大舞台が台無しじゃーん。変なの~」
 サーたんの視線の先では、体全体が錆びかかっているロボットがぎこちない動きで歩いてきていた。ロボットとはいっても骨組みではなく鎧を着たような格好で、たとえばお城に飾られているようなタイプのものだ。機械界のことをよく知らないサーたんはそんなイメージしか思いつかなかった。
 機械界はどこか別の世界と戦争をして負けたらしく、故郷を復活させるためこの大会に参戦したと聞いている。ご大層な理由だが、そもそも戦争するのが悪いのだ。
『さあ、両者準備が整いました。これよりバトル開始です! サーたんファイトー!』
 会場の天井などいたるところに設置されているスピーカーから、若い男の声が響き渡った。彼はこの大会の実況と審判を同時に務めており、言葉から分かるように悪魔っ娘のファンであった。そういった意味でも、サーたんの勝利はほぼ確定的といえる。
 開始のゴングが声援の中を突き抜けた。勝利条件は相手を再起不能にすること。ギブアップ可。降参なんてみっともない真似はサーたんには考えられないことではあるが。
「相手があたしで残念だったね。こんなのさっさと終わらせて、一気に注目集めちゃうんだから!」
 アニメ声で力強く言い放つと、何を思ったかミニスカートの両端をほんの少しだけ持ち上げた。ちょっぴり見えていた太ももの肌が広がると同時に、地が響くほどの歓声が爆発する。
『うおおっ! 見る者を魅了するサーたんの絶対領域だぁ! 会場の皆はカメラの持ち込みは禁止されているが安心してほしい! バトルの様子は公式映像として録画されているから後で買ってくれ! 俺は予約済みだぞ!』
 大興奮しているファンたち。サーたんは心の昂ぶりを感じて微笑んだ。
 彼女はふざけているわけではない。相手を魅了して己の支配化に置くという、れっきとした戦闘方法である。これは悪魔としての能力でもあり、彼女自身という天然の素材が誘惑効果に拍車をかけている。男はもちろんのこと女でさえもサーたんの虜になってしまうのだ。
(これよこれ。みんながあたしを見てる! ああ気持ちいい!)
 アイドル気質を備えている彼女の、まさに適材適所といえる能力であった。
「さあロボットさん、これであたしの――あれ?」
 普通なら魅惑的な肌を覗かせた太ももに見とれているはずの相手は、平然としていた。がっちゃがっちゃと耳障りな音をたてながらゆっくりと近づいてきている。ロボットなので表情の変化など分かるはずもないが、効いている様子がない。
「脚じゃダメ? じゃこっち?」
 今度はキャミソールの裾をめくる。またしても会場が割れんばかりの歓声。
『お、お、おヘソだ! サーたんの小さくて可愛いおヘソが顔を出したぞ! すっべすべなお腹撫で回したい!』
 だがしかし、一人――一体というべきか、錆びた体を持つそいつだけは何も感じていないようだった。ただひたすらに、黙々と、少しずつサーたんとの距離を縮めている。
「ええっ、お腹も違うの? あなたコアね。ということはこっちか!」
 お次は片手を腰に、もう片方の手を後頭部に添えた。天井が吹っ飛ぶかと思うくらい、観客たちは叫びながら立ち上がる。
『腋だぁー! 腋! 腋! 今日のサーたんはなんだか大胆だぞ!』
 実際大盤振る舞いである。太ももだけで既に鼻血を噴き出している者もいえば、今の三連続見せつけポーズで失神者も続出しており、彼女がいかに魅惑的であるかを表しているのだが――
 それでも、相手のロボットは歩みを止めることがなかった。
「なっ……太ももダメ、お腹ダメ、腋もダメって、あなた一体何フェチなのよ!」
「サーたんサーたん! 機械って心がないから多分意味ないよー!」
「ええっ? なにそれ、聞いてないし!」
 後ろの観客席から飛んできた声に振り向きながら唾を飛ばす。尻尾がぴんと上に伸びた。
 これは単純なミスだ。サーたんが機械界の住人について知識がなかったのがそもそもの原因である。
 性別関係なく魅了できる力を持っている彼女は、だからこそ勝負する前から負けるはずがないと決め付けていたのだ。彼女は常に誰かを虜にしてきたから。機械に誘惑が効かないなんて事実は知らなくて当然ともいえる。
「サーたん後ろ!」
 え、と振り返った瞬間、視界が急に横へとズレた。同時に感じる頬の熱。それは次第に痛みまで増していく。
「がっ……!?」
 バトルフィールドの床が目の前にある。さらに自分の名を叫ぶ観客の声。そこでようやくサーたんは殴られたのだと気付いた。じわりと広がる頬の痛みに呆然とする。
 殴られるなんてことはもちろん初めてのことで、ましてや大切な顔だ。怒りよりむしろ、なぜそんなことができるのか、という疑問の念が沸き起こる。
(だって、だって、あたしはみんなのアイドルなのに――)
 心を持ち合わせていないロボット兵は、倒れこんでいるサーたんの可愛らしい尻尾を掴み上げた。
「ぎぃやあぁぁぁぁ!?」
 電流でも流れたかのような悲鳴。痛みとは別の、なんだか体の奥を刺激するような感覚が彼女を襲った。小柄で細身な体がぶら下がりになり、ただでさえ短いスカートから黒の下着があらわになってしまう。
 そして沸き起こる歓声。
「ちょっ、ちょっとぉ! 見ないで!」
 サーたんは頬を真っ赤にしながら必死でスカートを押さえたが、ほとんど意味はなかった。下着がぎりぎり見えないくらいのところを維持するのがポリシーだったのに。
 恥ずかしさでこの場から逃げ出したい衝動に駆られるが、ロボット兵はそんなことなどお構いなしに右腕を引き絞っていた。
「ひっ!?」
 顔面を狙っている――! サーたんは目をぎゅっと瞑りながら両腕で顔を覆い隠した。
 だが無防備になってしまった腹部へと、ロボットはその鋼鉄の拳を突き込んだ。生地の薄いキャミソールが巻き込まれながら奥へと沈む。
「ぉ゛っ……!?」
 何の躊躇もない打撃が少女の腹を真正面から捉えた。柔らかな腹筋がいとも簡単に陥没し、内臓の形まで変えていく。
 見開かれた両目の瞳孔が針の先のように小さくなり、薄い唇から汚い呻き声が漏れる。
「は、ぐっ……ぇ……!」
 視界がロボット兵から床へと落ちる。拳がめり込んだ瞬間、逆さまの体がくの字に折れ、そのまま鋼鉄の腕一本だけで彼女の小さな体躯が高く持ち上げられた。まるで観客たちに見せ付けるように。
「かはっ――はっ――っ――」
 圧迫される横隔膜。腹の中に潜り込んだ異物に喘ぐように、サーたんは酸素を求めるが、口がぱくぱくと震えるだけでほとんど呼吸ができない。
 ロボットの腕を引き抜こうと両手で掴んだとき、その腕が反時計回りにねじられた。胃袋がごぽっと水っぽい音を立てて歪み、体全体がびくりと跳ねた。
「ごぇっ!? ぉ、ぅえ゛え゛え゛ぇぇぇぇぇぇ!」
 腹の底からこみ上げてきた熱いものが喉を小さく膨らませ、堪えることもできずに勢いよく吐き出した。少し黄色く濁った胃液がびちゃびちゃとフィールドに広がっていく。
 何も食べていなかったのがかろうじて救いだった。でなければファンの目の前で食べ物を嘔吐するなどという――そんなこと考えたくもない。
「げぼっ! げほっ――え゛っ――ぉぇっ――!」
 とはいえ、これだけ胃液を吐き散らしていれば十分に屈辱的。実際のところ、だらしなく舌を突き出して粘ついた液体を垂れ流している彼女の姿を見せ付けられた観客達は、しんと静まり返っていた。
 ドン引きという状況は最悪だ。腹の痛みは当然だが、誰一人歓声をあげていないことはアイドルである彼女にとって拷問に等しい。
 ロボットはゆっくりとした動きで拳を下ろす。悪魔っ娘はフィールドの床に投げ出され、胃液の溜まりへと転がった。
「おげっ、がはっ、ぇほっ、えっ――」
 びくびくと断続的に痙攣しながら腹部を抱える。咳き込むたびに粘液が溢れて止まらない。激しい嘔吐感は収まらず、内臓ごと吐き出したくなるほど気持ち悪い。
 苦しげに喘ぐ彼女の頬を、錆びた鉄の足がずしんと踏みつけた。
「ぶべっ!」
 奇妙の呻き声がこぼれる。床とサンドイッチ状態になり、苦痛で歪んでいた表情がさらに醜く潰れた。その様子はもちろん会場の高性能カメラによって撮影され、配信もされているのだ。
(もうやめて……みんなにひどい顔見られたくない……!)
 無我夢中でロボットの足首を殴りつける。駄々っ子のように。
 するとあっさり鋼鉄の足が離れた。安堵したのも束の間、再び腹部に激痛。
「ぐぶぁ!?」
 衝撃でサーたんの上半身が跳ね上がった。腹に落とされたロボットの足が、内臓をも押し潰さんばかりにめり込んでいる。仰向けになっていたはずの体がくの字になり、悪魔っ娘は自分の胴体に太い鉄の塊が突き刺さっているのを呻きながら見つめた。
「げはっ……ぁっ……うぇ……!」
 床とサンドイッチ状態になった腹部は文字通りぺしゃんこに圧迫されていた。様々な内臓器官から押し出されるような形で、サーたんの唇から赤の混じった液体が溢れ出す。
 思えば、実況者の声も聞こえない。彼らが崇拝する彼女がいいようにやられているのに、誰一人として「やめろ」という一言さえ叫ばない。
 それが、ものすごく頭にきた。なんなんだ。こんなに酷い目にあっているのに誰も助けようとしない。試合への乱入は禁止されているから?
「うう……ふざ、けないで……!」
 腹を踏み潰されたままなので声はほとんどかすれていた。誰にもその言葉は届いていないが、それでもサーたんは口内に溜まった液体を飛ばしながら必死で叫ぶ。
「ふざけんな……、ふざけんなぁ!」
 瞬間、彼女の体が輝き始めた。光ではない。しかしどこか透明感のある黒い光が、オーラとなって体を包み始めた。
 もうどうなっても知らない。みんながその気なら、自分だって。
 サーたんの額にもう一つ、目が生まれた。それは元々閉じられていたもの。第三の目。悪魔である証。
 ぎろり、とその瞳がロボットを睨みつける。すると錆びついた鉄の体が次第に宙へと浮き上がっていった。
 腹部から足が抜かれたとき、圧迫されていた内臓が一気に元の形へと戻る。なにか蠢くような、ごぼりと鈍い音。それは痛みも伴っていて、サーたんは再び重く咳き込んだ。
「んぐ、がはっ……!」
 もう構うものか。今更惨めな姿を見られたところでどうにもならない。眺めているだけで何もしようとしない観客たちに教えてやる。
「見なさい! これがわたし! 本当のわたしよ!」
 額の瞳が光が宿る。闇色の輝きが、光線となって撃ち出される。宙に浮いてもがいていたロボットの顔面に直撃。鋼鉄の頭部を破壊しても勢いは止まらず、そのまま天井まで貫いた。
 会場中にどよめきが走り、わずかながら悲鳴も聞こえた。
 瞳の大きさでしかない極細の光線だったため、穴が空いたものの天井が崩れ落ちるということはなかった。観客席には怪我人もない。バトルフィールドに横たわっている、頭のないロボット兵を除いて。
 サーたんは痛む腹部を堪えながら立ち上がり、周囲を見回す。殺人的な光線を放ったことに目を疑っていたであろうファンたちは、今はもう口を固く閉ざしている。
「ん、ふぇぇ……!」
 悪魔っ娘は涙を堪えることができなかった。両目と、第三の瞳からもぽろぽろと透明な雫を流している。尻尾もだらりと床に垂れていた。
 彼女にとってこれはコンプレックスだったのだ。悪魔界にはもちろんそういった、おかしな特徴を持つ住人がたくさん存在するし、それ自体が強力な力を有しているのも確かだ。
 だが、小さい頃に言われた。「怖い」って。同年代の子に真正面から告げられた。陰口も聞こえた。実際、瞳が三つもある悪魔は、どういうわけかサーたんだけだった。
「だから、隠してたのにぃ……! もうわたし、みんなに、かわいいって言ってもらえないよ……!」
 泣き出しながらその場に再びへたり込む。やっぱりイヤだ。みんなの視線がどこかへ行ってしまうのは耐えられない――
 突然、地鳴りが起きるほどの歓声が轟いた。
「ひぇ!?」
 びくりと肩と尻尾を震わせるサーたんへと、観客達が熱い眼差し送っている。それを彼女ははっきりと感じた。
「サーたーん! すごいぞー!」
「その目もすんごいキュートだ! ああっ、もっと睨み付けてほしい!」
「まだ隠し技があったなんて……ますます好きになっちゃうだろ!」
『勝者は悪魔界のアイドルサーたんです! 俺たちは決定的瞬間に立ち会えたのかもしれないぞ! きっとこの録画映像はいつもより何十倍も値が張るに違いない!』
 おのおの胸を熱くして声を張り上げる。ほとんど、いや全てが彼女を賞賛する言葉だった。一人も「怖い」などと目を背ける者はいない。
「そ、そうでしょ? すごいでしょ? かわいいでしょ?」
 まさか受け入れられるとは思ってもみなかったサーたんは目を白黒させたが、すぐに持ち前のキャラクターを前面に押し出した。涙の跡を残しつつもとびっきりの笑顔を咲かせる。
「みんな、これからもわたしを応援してくれるー?」
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
 そうだ、涙なんか似合わない。泣き落としなんて邪道もいいとこ。それにコンプレックスを隠しておく必要なんてなかったじゃないか。
 ファンは何もかも全部、真っ直ぐ見つめてくれるんだから。

 後日、映像については実況者の言った通りになった。普段のライブ映像からしてプレミア的な値段がついているサーたんの試合映像は、他の物より明らかに桁が多かった。ファンは例外なく彼女の勇姿が捉えられた録画をその手に収めている。同時に他の様々な世界にまで彼女の名は知れ渡るようになった。
 一部では、殴打されて胃液を吐いたり喘いだりしているシーンに興奮する者もいるそうだが、サーたん自身はその事実を知る由もない。
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