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★魔法少女マヤ

「こ、降伏します……! 私たちを見逃して……」
 母は自分よりもはるかに小さい子供を背に隠しながら、”敵”に向かって懇願した。
「えー、どうしよっかなー」
 無邪気な声で”異形の親子”を見下ろす少女は、顎に指を当てて白い歯を見せた。
 周囲には、親子と似た風貌のモンスターが転がっている。全て少女が一人で片付けたのだ。
「あなたの力は思い知った……! せ、せめて子供だけは助けて……!」
 この周辺にいたのはガーゴイル型モンスターだ。当然人間よりも強く、それなりに個体数も多い。
 しかし、親子の目の前にいる少女はそもそも格が違った。
「あはっ、泣ける、泣けるよ。子供のためには自分の命も惜しまないなんて、くーっ、母親の鑑ね。あははっ」
 愉快そうに笑う少女の手には杖が握られている。先端には青い結晶が埋め込まれていて、淡い光をまとっていた。
 普通の人間には無理だが、モンスターや少女と同じ”魔”を備える者ならすぐに感じ取れるだろう。
 そして、その界隈で彼女の名前を知らない者はいない。
 魔法少女マヤ。
 コスプレ衣装のようなコスチュームは、彼女のイメージカラーである青を基調としている。
 まだ中学生だが、衣装もさることながら童顔も相まって、端的に言えばロリっぽい雰囲気をかもし出している。
「あたしもこんな優しいお母さん欲しかったなー。羨ましいよキミ。だからさー」
 マヤが杖をひょいと動かすと、母親の背中に隠れていた子供ガーゴイルが、ふわりと浮き上がった。
「な、なにをするの……!」
 わたわたと空中で暴れている子供を見上げながら、母親は声を震わせた。
「あー、うん。嫉妬ってやつー? なんかむかついたからさ。死んじゃえ」
 なんの重みも感じられない声色で、マヤは魔法の杖を子供ガーゴイルへ向ける。
母親が制止する間もなく、杖から魔法の矢が放たれ、幼いモンスターの体を刺し貫いた。
 緑色の血を噴き出しながら地面へと落下する我が子の姿を見て、母親は大きな口をめいっぱい広げた。
「ア、ア、アアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!?」
「わ、うるさい! 大声あげないでよね!」
 耳をふさぐマヤの感情には反省とか、そんな色は一切感じられない。彼女は命を奪ったという実感を抱いていないし、そもそもこいつらは化け物なのだ。
 退治されて当然。ただそれだけのこと。
 母親は体をぶるぶる震わせながら、ぎろりと魔法少女を睨んだ。その瞳からは涙が溢れている。
 もちろん、マヤには何一つ響かない。
「うわー、あんたらも泣くんだ? きもっ。化け物が涙流してるとか、ウケるんだけど」
「ア、ア……マ、マホウショウジョオオオオオオアアアアアアアアアア!」
 怒り狂った母ガーゴイルは白目をむき出しにして、小柄な少女へと飛びかかる。だが鋭利な爪や牙が可憐なコスチュームを引き裂くことはなかった。
「グ――ァ――!」
 怪物の体は空中で停止していた。その体が地面から伸びた青白い光の槍によって貫かれている。
「残念でしたー。いい大人が子供相手にキレちゃって、みっともないと思わない? 恥ずかしくないの?」
 けらけら笑いながらマヤは怪物の顔をいろんな角度から眺め回した。
 母ガーゴイルは呪いでもかけるかのような唸り声をこぼした後、大きな口を引き裂かんばかりに広げる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ひゃっ!?」
 鼓膜が破れるかと思うほどの咆哮。マヤは思わず杖を落として両耳をふさぐ。
 時間にしてわずか三秒ほどだったが、母ガーゴイルは強烈な雄たけびをあげた後、がくりと頭を垂れて事切れた。
 しん、と静まりかえった夜の廃墟で、魔法少女は軽く息を吐いた。
「あーびっくりした。おどかさないでよね、もー」
 杖を拾い上げて母ガーゴイルの体をばしっと叩く。怪物は当然何の反応も示さず、串刺しとなっている体がすこし揺れるだけに終わった。
 この廃墟一帯を陣取っていたガーゴイルはほぼ全滅している。かろうじて逃げおおせた
者がいたとしても、それは他の連中がやってくれるだろう。ゴミ掃除までする必要はないのだ。
 んーっ、と少女は年齢相応といってよいのか、ほとんど凹凸のない細い体で伸びをした。
「はー終わった終わった」
 彼女にとって、今回のモンスター討伐は赤子の手をひねるも同然だった。
 いや、それ以下かもしれない。最強の魔法少女である彼女からすれば、ガーゴイルだろうが何だろうが、自分以外は虫けらなのだ。
「なんでこいつら夜に出てくんのかなー。もー、学校の時間にこいつら出てくれば授業サボれるのにー」
 心底面倒くさそうに愚痴をこぼす。実際のところ魔法少女を要とする組織『コスモス』は、その権力が政府以上である。
 世界を守っている貢献として義務教育の費用は免除されているし、彼女が望むものは何でも与えられた。
 それは機関が彼女を優遇しているというより、逆に恐れているともいえた。
 中学生であるマヤの精神面はまだまだ子供だし、どんな気まぐれを起こすか分からない。
 なにしろ文字通り”最強”なのだ。歴代に類を見ないほどの。
 その気になれば世界を――地球そのものを半壊させることだって容易と噂されていた。だから、今のうちにおだてておく必要があるのだった。
 言うなれば、マヤは世界から甘やかされている。だから彼女は同年代の女の子よりもずっとワガママで、自分勝手で、自己中心的であった。
 しかし誰も文句を言えないのが実情であり、『コスモス』のメンバーたちは最強たる実力を認めつつも、苦い顔を禁じえなかった。
「お腹すいたし、かーえろ」
 世界や周囲の思いなど一ミリも把握していないマヤは、小さくあくびをしながら飛行魔法を唱えようとを空を見上げた――その時気づいた。
 上から何か降ってくる。夜空と同じように黒く、しかしハッキリと目に見える。
「わっ!?」
 迎撃の魔法が間に合わない。マヤはそれを察し、咄嗟に体を横へと投げ出した。
 黒い物体が地面に着弾し、地鳴りと共に轟音が響き渡る。
 巻き起こった風でマヤの体がごろごろ転がっていき、十数メートル先でようやく止まった。
「あーびっくりした。何なのよ」
 けろりと彼女は起き上がり、短いスカートに付いた砂を払った。
 彼女が着ているコスチュームも魔法で製作されたもので、それに見合った防御力を持っている。だから、たとえ石を投げられたとしてもマヤに痛みは感じない。
 視線を向けると、そこには襲来してきたモノの姿があった。

「――――」
 漆黒のシルエットは西洋甲冑。かといって重々しいものではなく丸みを帯びたデザインで、有り体にいえばスリムな印象があった。
 目に留まるのは、フルフェイスの兜の後頭部に見える一房の髪だった。
 大人の腕一本分の長さだろうか、それは中に入っている者ではなく、アクセサリーのように兜に着けられており、ポニーテールのようになっている。
 その姿を見たマヤは変な笑いがこみ上げてきて、
「あはっ、なにそのカッコ。ヘンなの」
 襲い掛かってきた者に対して挑発的な言葉を投げかけるのも、マヤの得意とするところだった。
 しかし甲冑姿の相手は聞こえているのかいないのか――それとも本当に中に誰か入っているのかさえ定かではないが、とにかく挑発には乗らなかった。
 ふん、と最強の魔法少女は鼻で笑う。
「で、あんた何? 何しにきたわけ?」
 果たして答えが返ってくるのかどうか――特に期待もしていなかったマヤではあったが、挑発を無視した相手は明確な言葉でもって返答してきた。
「――ヨバレタ」
 機械的ではない。かといって生物のような抑揚もない。男か女かも判別がつかない。だがはっきりと放たれたその声は、マヤの鼓膜に響いた。
「――ヨバレタカラ、トンデキタ」
「呼ばれた? って、あたしはあんたなんか呼んでないんだけど――」
 ふと、マヤは気づく。すぐ背後にあるガーゴイルの死体。あの母親は死ぬ間際、雄たけびじみた叫びを轟かせていた……
「あ、そう。ふーん。仇討ちってこと? あのどこにでもいるようなバケモノの? あはっ、ウケるー! なにそれかっけぇー! あっはははは!」
 けらけら笑うマヤは心底面白そうに腹を抱えた。正体不明の存在が現れても動じないのは、彼女の肝が据わっているとかではなく、ただ単純に怖いもの知らずなだけだ。
 ひとしきり笑い転げた後、涙を拭いながら敵を見据える。
「でもさ、相手を見て行動しようよ。あたしのこと知らないわけじゃないでしょ?」
「――シッテル、ゼンブシッテル」
 ……マヤは本能的に何かを察知した。肌がぞくっとした。こいつは今までのヤツとは違う気がする。

 魔法少女の表情からは笑みが消え、一呼吸置く時間さえない瞬間に、攻撃魔法を完了させていた。
 空中に生み出された無数の青白い光弾が、雨のように甲冑へと襲いかかっていた。
 着弾と同時に激しい爆発が発生し、闇のシルエットは瞬く間に爆煙で包まれた。
 空気がびりびり震えて、爆発音が次々に鼓膜を叩く。マヤは不機嫌そうな顔でその音を聞いていた。
「……なによ、ビビったわけじゃないからね。今のは」
 そうだ。得体の知れない敵から放たれる存在感に動揺したわけじゃない――彼女はそう自分に言い聞かせていた。
 攻撃が終わり、もくもくと吹き上がる爆煙の奥に――そのシルエットはまだ完璧な形を保っていた。
「……あ?」
 高層ビルを粉々にするくらいの魔法を叩き込んだはず。
 あんなただの鎧人形なんか木っ端微塵になってなきゃおかしい。
 真っ黒な姿がぼうっと浮かんでいる。どうして、平然と立っているんだ。
「――マホウキカナイ」
「……はい?」
 意味が分からない、とマヤは訝しげな声をあげ、再び攻撃魔法を生成した。今度は光の槍だった。
 鋭く尖った光の弾が、先ほどよりも密度を濃くして敵に降り注ぐ。
 が、
「はあ!?」
 全部、弾かれた。別に甲冑は何もしていない。その真っ黒な鎧でマヤの攻撃魔法を全て受け止めている。
 アスファルトに小石を当てたような乾いた音が連続するだけだった。魔法の槍がことごとく弾かれて霧散していく。
「ちょっ、なに、これ。どうなってんの!」
「――マホウキカナイ」
「ふざけないで!」
 大声を張り上げながらマヤは次々と攻撃を叩き込む。
 ありとあらゆる形をした光の弾が甲冑を襲ったが、効果があるようには見えなかった。
「なんでよ! なんで! なんでなんでなんで!」
 いよいよマヤの焦りが表情にあらわれてきた。自慢の魔法が効かない相手。
 そんなのあり得ない。魔法ってのは万能のはずなのに。
 小さく呻く魔法少女へと、甲冑がついに動きを見せた。とはいってもただ走るだけ。がちゃがちゃと鎧の音をたてながら接近していく。
「ひっ……! こ、こっち来んなぁ!」
 明らかに動揺した様子でバリアを張る。攻撃だけで全てを終わらせてきたマヤが、防御魔法を行使することは今まで数えるほどしかなかった。
 それほど今の彼女は切羽詰っている。
 とはいえ、最強である彼女は防御も強力なものを持っている。ただそれを使う機会がなかっただけだ。
 マヤの目の前に円形の青白い光が出現した。
 色素が薄いせいでお互いが透けて見えるため弱弱しい印象だが、彼女の魔力から生み出される壁となれば、例え核爆弾でも打ち破ることはできない。
 そもそも魔法はそういった物理的なものなんかに負けるはずないのだ。
 ――繰り出される鋼鉄の拳。
 なんの小細工もないただの物理攻撃が、最強のバリアを木っ端微塵に砕いた。

「……あっ」
 ガラスが割れたような音と、あり得ない光景を目の当たりにしたマヤは呆然と立ち尽くすしかなかった。
 杖を持ったまま無防備な体を晒している魔法少女の腹部を、鎧の拳が突き上げる。
「ぇ゛っ……!?」
 すさまじい衝撃音。華奢な肢体が勢いよく浮き上がって、くの字に折れたまま十数メートルほど空中で放物線を描いた。
 一瞬の静寂の後、どさりとうつ伏せに倒れこむ音。
「ふっ、っ……ぐぇ……!?」
 目を白黒させながらうずくまり、腹部の奥底から広がってくる変な刺激に呻く。
 敵の攻撃なんてほとんど受けなかったマヤにとって、これはワケのわからないものだった。
 だが、すぐに『痛い』という感覚が脳を支配していく。
「ぐっぷ……! ぅ゛ごえっ……!」
 腹を押さえながらビクビクと痙攣し、透明な胃液を嘔吐する。小さな口から粘ついた液体が溢れ出て、地面を濡らした。
 まだ中学生になったばかりの少女には、純粋な”殴打”は未知の経験だった。
 小さい頃から魔法少女としての権威を欲しいままに生きてきた彼女は、親にもぶたれたことなんてないし、友人との喧嘩もしたことがない。
 殴られた――それだけのことが、マヤには理解不能だった。
 腹を殴られて何でこんなに痛くて、気持ち悪くて、吐いてしまうのか、意味不明だった。
「――イタイ」
 甲冑の言葉は静かだが、耳に強く残る声色だった。
 近くで囁かれているかと思うほど体にぞくりと響き渡り、小刻みに震えるマヤの精神に突き刺さる。
「――イタイイタイ」
 それは甲冑自身の言葉ではない気がした。なぜか、ガーゴイル親子の姿が脳裏をかすめる。
 それだけではない。彼女自身が倒してきた――いや、嬲り殺してきたといった方が正しい。
 とにかく、そのモンスターたちの姿や悲鳴が思い起こされてきた。
「ぅぅっ……ぐぅ……!」
 腹部の痛みに悶絶しながら、首を振って頭の中から怪物たちの姿を追い出そうとする。
 しかしどういうわけか、忘れていたはずの光景が次々に映像として浮かんでくるのだった。
 映像を巻き戻しているかのように、それは途切れずに繰り返されていく。
 彼女は自覚していなかったが、散々に惨たらしい殺し方もしてきた。
「――イタイイタイ」
 この甲冑姿の敵には、殺してきたモンスターたちの怨念が宿っている――きっと、こいつは復讐にきたのだ。

 いまだにうずくまって咳き込んでいるマヤに歩み寄った黒の鎧は、彼女の頭を鷲づかみにして軽々と持ち上げた。
「ぃやっ……!」
 硬い指が頭をがっちりと掴んでいる。完全に足が地面から離れているマヤは、かろうじて離していなかった魔法の杖で甲冑を殴りつけた。
 しかし、甲高い音が響くだけで、何らかのダメージも与えることはできない。
 手を引き剥がそうともがいているのを無視して、黒の鎧は再び腕を引き絞った。
 青色のコスチュームの中央――先ほどとほぼ同じ箇所に、猛打がめり込む。
 どふっ、と大きく鈍い音。
「ぐう゛ぅ゛ぅ! ぁ゛はっ……! げぼほッ……!」
 幼い魔法少女の口から、醜い呻き声と舌が飛び出した。
 ぴくぴく震えている舌先から、口内に溜まっていた胃液が垂れ落ちていく。
 そして敵は容赦がなかった。悶絶している少女へお構いなしに、鋼鉄の塊を打ち込んでいく。
「ぐぅ゛ぇっ! ぇぐっ、や、やめ゛ぇ……!」
 打ち込まれる度に少女の体が揺れ、柔らかな腹がぐっぽりと陥没する。
「げうっ! が……、はっ……!」
 鳩尾を突かれると呼吸が止まり引きつった声が洩れ、
「ぅえ゛え゛ぇぇぇぇええ……! ぐぇ、ぇ゛ろっ……!」 
 中央を抉られると胃袋が潰れて胃液が逆流し、
「んぐぅぅぅ!? ぅごお゛っ……!」 
 下腹にめり込むと子宮が刺激される。
 幼い魔法少女の肉体はもはやただの楽器だった。柔な肉を打つ音と、苦悶の呻き声を奏でる肉の楽器。
 まともな人間だったら目を逸らすか、力を持つ者だったら止めに入ることだろう。
 ただ、最強の名をほしいままにしてきたマヤを知る者たちは、こう感じたかもしれない。
 ……いい気味だ。
「――イタイイタイイタイ」
 漆黒の鎧は殴打をいつまでも続けた。
 何十発目かのボディブローが魔法少女の腹を抉ると、細い喉元が蠢いて、ごぼりと薄く黄色い胃液が迸る。
「ぐぼっ……! ぉっ、ぉ゛ぇ゛えっ……!」
 ぶら下がっている状態マヤの真下には、彼女自身が殴られる度に吐いた胃液と唾液が駅溜まりが生まれていた。
 青白いコスチュームも、度重なる殴打で腹部の辺りが破け、すでに紫色に変色した薄い腹筋が覗いている。
「はがっ、かはっ、うぇ゛ほっ……! や、やめ、えふっ、やめて、くださいぃぃ……!」
 向かうところ敵なしだったはずの魔法少女は、いまやただの女子中学生に成り下がっていた。
 涙と唾液と胃液でべたべたに汚れた口で、許しを乞う。普段は彼女が乞われる側だった。今までは。

「も、もぅ、やめてぇ……! げほっ、ぉ、お腹、やめて、くださひぃ……! 変な音、して、し、死んじゃぅぅ……!」
 痣で染められた腹の中から、詰まった排水溝のようなくぐもった音が聞こえてきていた。
 殴られすぎて潰され、外側から強制的に動かされたせいで正しい位置には存在しない内臓たちの呻き声だった。
 ぐちゃぐちゃになった内臓同士が呼吸するたびにこすれあって、新たな痛みと嘔吐感がこみ上げてくる。
 地獄の痛みを味わっている少女の顔に、黒の甲冑はずいっと兜を寄せた。
「――イタイ?」
 今度は、疑問系だった。
「――イタイ、ワカッタ?」
「い、いたい、分かったから……! 許して、許してくださいぃぃ……!」
 ほんの少しだけ伺うように沈黙した後、甲冑はぼろぼろ泣き叫ぶ魔法少女を解放した。
「ぅぶっ、ごぼっ! ぇ゛ほっ! ぅげぇぇああっ……!」
 地面に崩れ落ちたマヤは、痣が残る腹部を抱えてうずくまる。
 いまだに収まらない胃液の逆流と激痛に、体をびくびくと震わせていた。
「――――」
 痙攣している少女をわずかに一瞥した後、鎧姿の戦士は脚部を曲げて身を屈めた。そして爆発したような音が足元から轟き、空へと跳躍した。
 飛び上がった甲冑は移動を開始し、満月が昇る夜空へと溶け込んでいく。
いつしか肉眼では確認できなくなり、後には飛行音と、敗北した最強魔法少女の呻き声だけが残された。
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